ワーク・ライフ・バランスの実現を目指す!勤務間インターバル制度の導入について(その2)

働き方改革

ワーク・ライフ・バランスの実現を目指す!勤務間インターバル制度の導入について(その2)

 

前々回のブログで、勤務間インターバル制度を導入している企業がごくわずかであることをお伝えしました。

(ブログ記事はこちら)

一方で、労働者側からは一定の需要があるという興味深いデータが出ています。

日本労働組合総連合会(以下、「連合」と記載)が2017年に発表した※調査結果によると、「自分の職場に勤務間インターバル制度を導入すべきだと思うか」という質問に対して「導入すべき」と答えた人の割合は全体で38.2%と「導入の必要はない」の19.5%の約2倍となっています。また、業種別に見ると、建設業、運輸業、金融・保険業、教育・学習支援業で「導入すべき」が40%を超えています。

勤務間インターバル制度には、労働者側から一定の需要があり長時間労働が常態化している業種ほどその傾向にあるということが言えるのです。

勤務間インターバル制度を導入することは、採用市場における対外的アピールポイントになるとともに、対内的にも従業員の健康に配慮しているという企業姿勢を見せることにもつながると考えられます。

※日本労働組合総連合会 36協定に関する調査2017 ≪働き方・労働時間に対する考え≫

 https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20170707.pdf

 

勤務間インターバル制度導入までのプロセス

 

ここからは勤務間インターバル制度導入までのプロセスをご説明します。

<ステップ1>

制度導入の検討

 ↓

労使での話し合い

 ↓

企業内の労働時間の実態の把握

 ↓

<ステップ2>

実態を踏まえた休息時間確保の制度設計の検討

 ↓

<ステップ3>

試行

 ↓

<ステップ4>

検証及び見直し(問題点の発掘)

 ↓

<ステップ5>

本格稼働(制度化)

 

次は、各ステップにおける検討項目と留意すべき点をご紹介していきます。

 

<ステップ1>制度導入の検討・労使での話し合い・企業内の労働時間の実態の把握

(1)制度導入の検討

勤務間インターバル制度を導入するためには、目的や期待される効果を明確にすることが重要です。長時間労働の改善を目指すものなのか、労働者の健康確保の観点からなのか、人材の確保・定着に向けたものなのかなど目的をはっきり示すことにより、期待される効果も明確になります。

制度の導入が決定した場合、トップの意思を明確にして検討を進めることが必要になります。トップの意思が明確になったら、全従業員に対して共通理解を得ることが重要です。

 

(2)労使での話し合い

勤務間インターバル制度を導入する際は、それぞれの労働者が抱える事情や企業経営の実態を踏まえ、企業内において労使が十分に話し合うことが重要です。労働時間の設定や改善を、労使で話し合うための機会を整備しましょう。

 

(3)企業内の労働時間の実態の把握

企業内の理解が得られたら、制度導入のための具体的な検討に進みます。

就業規則等で定められている労働時間のしくみや、実際の労働時間を労働者から確認し、労務管理担当者が必要なデータをとりまとめるなどして現状を把握し、見直しが必要な問題点や課題を洗い出します。

これらの中には、休憩時間・時間外労働時間・労働者の通勤時間・取引先との制約・労働者のニーズなどが含まれます。

 

<ステップ2>実態を踏まえた休息時間確保の制度設計の検討

実態把握の結果を踏まえて、制度のあり方を検討します。

具体的には以下の項目をベースに、制度の下地を整えていきます。

 

①対象者

全社員を対象とする場合、管理職を除く全社員を対象とする場合、特定の職種に限定する場合などがあります。

 

②インターバル時間(休息時間)

インターバル時間の設定には、労働者の睡眠時間、通勤時間及び生活時間を考慮することが重要です。

インターバル時間の設定方法には、9時間、11時間など一律に時間を設定する方法や職種によってインターバル時間を設定する方法、「義務」とする時間と「努力義務」とする時間を分けて設定する方法があります。

労使の話し合いにより、自社の実態に合ったインターバルの時間を定めましょう。

 

③休息時間が次の勤務時間に及ぶ場合の勤務時間の取扱い

前日の残業時間次第でインターバルが翌日の始業時刻を超えることがあります。その場合の取扱いについて決めておくことが必要です。

 

◆休息(インターバル)時間と翌日の所定労働時間が重複する部分を労働とみなす

終業時刻は変更せず始業時刻のみを遅らせて、結果的に遅らせた時間分は労働免除とする方法です。この方法を導入する場合には、労働時間管理の方法や他の労働者との公平性について事前に十分検討しておく必要があります。

 

◆始業時刻を遅らせる

始業時刻を遅らせることにより、終業時刻も遅らせる方法です。この方法を導入する場合、前日の長時間労働により所定労働時間帯を後ろ倒しにするようなことが継続するようでは勤務間インターバル制度の本来の目的を達成することはできません。そうならないための対処方法を十分検討しておく必要があります。

 

④適用除外

業務の緊急性など、特別な事情が発生した場合を適用除外として運用することも可能です。例えば、重大なクレーム対応や納期のひっ迫、決算等の業務、災害の場合などが挙げられます。

インターバルが確保できない場合は、一定の回数制限や代替措置をとる方法があります。

 

⑤労働時間管理の方法

勤務間インターバル制度の運用にあたっては、始業時刻・終業時刻を含め、労働時間を適切に把握・管理する必要があります。

労働者が終業時刻をきちんと把握しないで帰宅してしまった場合、十分なインターバルを空けずに出勤したり、逆に遅刻してしまったり、ということが起こり得ます。こうしたことを避けるためには、退勤後でも翌日の始業時刻が分かるような勤怠管理システムを導入することをお勧めします。

 

⑥勤務間インターバル制度実施当日の企業内手続き

手続きは特段不要としている場合も多いですが、時間外労働の申請手続と連動する形で勤務間インターバル制度の申請手続を行うという方法も考えられます。

 

⑦制度の拘束力

インターバルを確保できなかったとしても、特段の事後措置は設けていない場合が多いですが、確保できなかった場合には事後に労使間で話し合い、今後の対策を検討するということが考えられます。

 

⑧その他

突発的事情によりインターバルが確保できなかった場合の取扱い、就業規則などの根拠規定の整備などを話し合います。

 

<ステップ3>試行

企業活動に支障なく、より働きやすい環境を整備するためには、試行期間を設けることをお勧めします。

勤務間インターバル制度の効果を測定するために、対象者やインターバル時間などの項目を設定し、実態調査や試行期間が終了する時点でアンケートを行い、対象者などから意見を求めることにより、効果の検証を行うと良いでしょう。

 

<ステップ4>検証及び見直し(問題点の発掘)

ステップ3の試行期間における検証やアンケート結果、ヒアリング結果などから解決すべき問題点を洗い出し、制度の見直しを行います。

 

<ステップ5>本格稼働(制度化)

試行期間中の評価を経て、勤務間インターバル制度を導入する目的、効果が十分に期待できるようなしくみ・制度となるよう調整を行った上で、本格導入を図ります。

試行段階で勤務間インターバル制度に関する社内の制度化を行っていなかった場合には、本格導入にあたって適切に運用するために、就業規則など根拠規定を整備しましょう。

また、本格導入を図った後でも、一定期間ごとに実態調査を行うなどにより、制度検証を行い、必要があれば見直しを行いましょう。

 

スムーズな運用に向けて

 

勤務間インターバル制度をスムーズに運用していくためには、制度のルールを労働者に理解してもらう必要がありますので、社員教育は必須と言えます。教育を行い、制度の周知徹底をすることにより、すべての労働者に理解してもらうことが理想です。それが難しい場合は最低限、労働時間を管理している管理職の理解度は高めておく必要があります。

前述した通り、勤務間インターバル制度を運用するためには、労働時間の管理が重要になります。特に、終業時刻は始業時刻を含めた翌日の勤務時間に影響を与えます。終業時刻を従業員や企業がきちんと把握していないと、翌日の労働時間に支障が出てしまいます。そうした事態を避けるために、勤怠管理システムの活用をお勧めします。

勤務間インターバル制度の適用により翌日の始業時刻が変わる場合、勤怠管理システムを導入していれば当然労働者本人はその時刻を分かっていますが、他の労働者は始業時刻を知らず、同じ職場の労働者の業務に支障が出てしまう場合があります。よって、勤務間インターバル制度により始業時刻にずれが生じた場合、本人だけでなくその上司や同僚も把握できることが望ましいと言えます。スケジュールを共有するツールを活用したり、そのようなツールの導入が難しい場合は、最低限、電話やメールなどで始業時刻がずれることを連絡したり、職場のホワイトボードに翌日の予定始業時刻を書いておいて他の労働者に知らせるなどの方法も考えられます。

勤務間インターバル制度の導入は努力義務であるため、現段階で導入の必要性がないと考えているのであれば、無理に導入する必要はありません。

しかし、労働者側からは一定の需要があるため、インターバル制度の導入が必要であれば、そのメリットとデメリットを十分に理解したうえで、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

参考:

  • 「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会」報告書|厚生労働省
  • 「働き方改革法」の実務|日本法令