従業員の健康こそが生産性向上のカギ!健康経営のススメ①

働き方改革

従業員の健康こそが生産性向上のカギ!健康経営のススメ①

 

なぜ生産性を向上させる必要があるのか?

 

働き方改革の話題で必ず出てくるキーワードに、「生産性の向上」があります。今回は健康経営がテーマですが、なぜ「生産性の向上」が連呼されるのでしょうか?まずはその点について考えてみたいと思います。

第一に上げられるのが、労働力人口減少の問題です。少子高齢化が進行し、労働力人口が減少している昨今、深刻な人手不足に陥っています。労働力人口を上昇させるためには、女性・高齢者・外国人・障害をお持ちの方など、より多様な人材に活躍してもらうことが必要になります。同じ場所で社員が長時間働くような、今までの働き方を全面的に見直し、一人一人の状況に合わせた働き方の実現が要求されます。どんな働き方を選んでも、社員がモチベーションを高く働き続けられるようにすることが重要です。よって、働き方改革関連法の2本柱である「労働時間法制の見直し」「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」が必要になるわけです。

実際、日本の生産性はというと、OECDデータに基づく2017年の日本の時間当たり労働生産性は米国の3分の2程度の水準に相当し、順位はOECD加盟36か国中20位でした。前年から1.4%上昇したものの順位に変動はなく、主要先進7か国でみると、データが取得可能な1970年以降最下位の状況が続いているのです。

労働時間が比較的短い非正規労働者の比率が上昇していることもあり、日本の労働時間は主要国の中ではとりわけ長いわけではなくなってきているものの、残念ながら労働生産性についてはまだ他の先進国との間には差がある状況です。この「労働生産性」を確実に上げていかないと、日本の明るい未来は描けないのではないでしょうか。

 

健康経営でどんなことが期待できるのか?

 

「健康経営」とは、従業員の健康保持・増進の取組みが、将来的に企業の収益性を高める投資であるという考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです。

働き方改革と健康経営を同時に取組むことで、生産性の向上により一層の効果が期待できます。近年、働き方改革と同様に注目を集めている、「健康経営」に取組む企業が増えてきています。

健康経営には、事故防止・労働災害発生の予防や病気の予防による企業負担の軽減、法令遵守といった“守り”での恩恵がある一方で、生産性の向上やプレゼンティーズム(後述)の軽減、社会的評価と企業イメージの向上など、“攻め”の恩恵も注目されています。

健康経営は、これまでのように法律に則って健康診断や医師による面談を行うだけでなく、企業が経営理念に基づき、一丸となって従業員の健康保持・増進に取組むことです。会社全体で取組むことにより、従業員の活力向上や生産性向上をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上へ繋がることが期待できます。

実際に、健康経営が企業価値向上に結びついた事例をご紹介しましょう。

ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、75年前に作成された”我が信条(Our Credo)”で、全世界のグループ会社の従業員およびその家族の健康や幸福を大事にすることを表明しています。同社で、グループ世界250社、約11万4,000人に健康教育プログラムを提供し、投資に対するリターンを試算したところ、健康経営に対する投資1ドルに対するリターンが3ドルになるとの調査結果が出ています。

具体的な投資の内容は【人件費(健康・医療スタッフ)】・【保健指導等利用費、システム開発・運用費】・【設備費(診療施設、フィットネスルーム等)】です。

これに対し、投資リターンの内容は【生産性の向上(欠勤率の低下、プレゼンティーズムの解消)】・【医療コストの削減(疾病予防による傷病手当支払い減、長期的医療費抑制)】・【モチベーションの向上(家族も含め忠誠心と士気が上がる)】・【リクルート効果(就職人気ランキングの上昇で採用が有利に)】・【イメージアップ(ブランド価値の向上、株価上昇を通じた企業価値の向上)】です 

経済産業省が平成28年度に行った、就活生及び就職を控えた学生を持つ親に対して、就職先に望む勤務条件等について実施したアンケートによると、就活生の4割超が、就職先を選ぶポイントとして「福利厚生の充実度」・「従業員の健康や働き方への配慮」を挙げており、親では「従業員の健康や働き方への配慮」・「雇用の安定」が4割以上を占める結果となりました。双方とも「従業員の健康や働き方への配慮」の回答率が高く、働き方改革や健康経営への取組みが、採用活動にもプラスの影響を及ぼすことが明らかだと言えます。

実際、中小零細企業であっても、健康経営への取組みを採用活動でアピールしたところ、これまでにはありえなかった数の応募があり大変驚いた、という声がいくつも聞かれています。

 

実は大きな労働損失、プレゼンティーズム

 

“攻め”の健康経営における効果のひとつとして「プレゼンティーズムの軽減」があることについては前述しました。

「プレゼンティーズム」という言葉を初めて耳にされる方もいらっしゃるかも知れませんので、ここでご紹介しましょう。

まず、病気による労働損失を考えるとき、何らかの病気によって会社を休む状態を思い浮かべるのではないでしょうか。このような状態のことを「アブセンティーズム」と言います。一方で「出勤はしているものの体調が優れず、生産性が低下している状態」のことを「プレゼンティーズム」と言います。体調が優れない原因として、慢性疲労症候群、うつ病、腰痛・頭痛、花粉症を始めとしたアレルギー症等が挙げられます。例えば花粉症で目がかゆい、繰り返すくしゃみや鼻水によって仕事に集中できないという経験をされている方も多いと思います。このような状態では労働生産性が低下しており、結果的に企業の損失につながっているのです。

では、「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」では、どちらの労働損失が高いのでしょうか?

多くの研究結果によれば、プレゼンティーズムによって企業には見えない労働損失(労働生産性の低下による経済的損失)が発生しており、その額は医療費や病気休業にかかる費用よりも大きいとされているのです。

これらを踏まえ、攻めの健康経営という視点で考えたとき、どのような対応策が考えられるでしょうか。

例えば、慢性疲労症候群、うつ病、腰痛・頭痛、花粉症などは、職場において事前の予防をすることで防ぐことができます。

慢性疲労症候群については、長時間労働を防ぐためにノー残業デーの設定や年次有給休暇の取得促進などを行い、休息を与えるしくみをつくることが有効です。

うつ病については、うつ病と密接な関係があると言われるストレスやストレス反応等について社員教育を行い、ストレス解消やセルフケアについて理解しておくことで疾病の発生予防に寄与することができます。

腰痛や頭痛予防についてはストレッチや姿勢を正すことが有効です。

花粉症予防は、職場の入口で衣服についた花粉を落とす、玄関マットを敷く等の地道な取組みの他に、症状がひどくなる前に、処方薬を飲むことも予防に十分役立ちます。 

このような方法を職場の中で検討し、また衛生委員会などでこれらを議題に取り上げるのも良いでしょう。

心身ともに健康な状態であれば、能力を十分に発揮することができます。そのためには、プレゼンティーズムとは何かを知り、かつそれを軽減するしくみを作り実践することが大切です。

 

健康経営は何から始めるべきか?

 

健康経営がもたらす効果についてはご理解いただけましたか?

では、健康経営の取組みを浸透させるには、何から取組めばよいのでしょうか。

一番大切なことは、経営者自身の想いです。

まず、経営者自身が健康づくりに取組むこと。そして、自社になぜ健康経営が必要で、健康経営を通して会社としてどんな姿を目指すのか、これらを経営者自身の言葉で従業員に伝えることが重要です。この経営者のメッセージ=健康宣言を発信することが健康経営のスタートになります。

そして、健康宣言の内容は、なるべく具体的に、従業員に分かりやすい言葉を用いることが大切です。

経営者の本気度が従業員の取組みへのモチベーションに大きく関わってきますので、健康宣言をしたなら、経営者は従業員の健康に本気で取組む姿勢を継続的に示していきましょう。

参考:

  • 労働生産性の国際比較2018年版/日本生産性本部/2018年/33ページ
  • 健康経営の推進について/経済産業省/2018年/68ページ 
  • 健康経営アドバイザーテキスト/東京商工会議所/2018年/128ページ